*PITTI FILATIで発表された2025年春夏コレクションについて解説。
*2025年春夏コレクションのキーワードは「シーズンレス」と「タイムレス」。
*クワイエットラグジュアリーのトレンドが続いている。
はじめに
2024年1月、イタリアで開催された毛糸の国際見本市:PITTI FILATIにて2025年春夏コレクションが発表されました。
今回のテーマは「MILESTONE:マイルストーン」です。
このテーマを軸に [シーズンレス] と [タイムレス] をキーワードにした最新の毛糸トレンドについてご紹介します。
トレンドテーマ:MILESTONE – マイルストーン
引用:https://filati.pittimmagine.com/it
2025年の春夏コレクションのテーマは「MILESTONE:マイルストーン」です。
マイルストーンとは、本来は道の距離を示すための「石」を指しますが、進行を示すポイントや「重要な節目」としての意味合いもあります。
「石」としてのマイルストーン
石は永続性と安定性を象徴し、ファッションでもその価値が求められます。
2025年春夏コレクションでは、環境問題への意識が高まる中で、自然の力を象徴し、環境保護や自然との調和を重視する動きとリンクし、一時的な流行よりも長く使える高品質な製品が求められています。
「重要な節目」としてのマイルストーン
2023年は観測史上最も暑い年とされ、気候変動が深刻化しています。
ファッション業界は新たな時代の節目に立ち、次なるステップへ進むための重要な節目にあります。
伝統的な技術と現代の革新を融合させ、未来へ続く新たなスタイルや価値観を創造する節目としての意味合いがあります。
キーワード
シーズンレス:一年中使える糸
近年の気候変動により、従来の季節に縛られない「シーズンレス」な糸が注目されています。
例えば、従来春夏シーズンでは清涼感のあるコットンが多く使われていましたが、コットンを主体とした糸に軽い起毛を施し、ほんのり温かみを持たせた糸や、ナイロン繊維を絡ませて毛足感を出して秋冬シーズンにも使用できる糸が多く提案されています。
また、ビスコースに伸縮繊維を合わせたビスコース×ストレッチ素材の人気が高まっています。
ビスコース×ストレッチの糸で編まれたミラノリブのジャケットは季節問わずカジュアルにもエレガントにも着用できるのでシーズンレス、そして後述するタイムレスに合致するアイテムとなります。
タイムレス:永続的な価値を追求
一時的なトレンドに流されず、製品の質と価値を重視する「タイムレス」な素材が重視されています。
温暖化や環境問題の深刻化に伴い、廃棄物を減らし、限りある資源を大切に使う動きが強まっており、高品質な製品を長く使うという考え方がサステナブルファッションの一環として重要視されています。
市場の動きとしても、少し値の張る糸でも品質を重視する消費者が増えていることから高品質な糸の売れ行きが好調です。
Quiet Luxury (クワイエット・ラグジュアリー)
クワイエット・ラグジュアリーは、一時的なトレンドや派手なデザイン、ロゴに頼らず、製品の質を最重視し、高品質な素材で作られた時代を超越したシンプルで洗練されたファッションのこと。
“クワイエット・ラグジュアリー”はその名の通り、派手で目立つデザインを遠ざけ、抑えた色や柄で素材の上質さを引き立てる、気品ある装いのこと。
モノグラムやロゴで主張するのではなく、あくまで上質で、エレガントかつベーシックであるこのスタイルは、時の試練に耐えることができる究極のタイムレスファッションだと言えるだろう。
引用:https://www.vogue.co.jp/article/uk-vogue-quiet-luxury-trend
2025年春夏:注目の毛糸
●ウォームコットン
●ノットヤーン、スラブヤーン、壁糸
●メタリックヤーン
●ビスコース×ストレッチ
フェザーヤーン:毛足がある糸
春夏コレクションなのにフェザーヤーン:毛足がある糸?
そう思った方もいらっしゃるかもしれません。
毛足系の糸というはこれまでモヘアなど主に秋冬が定番でした。
春夏コレクションでもナイロン100%のフェザーヤーンなどは以前より展開がありましたが、今回のキーワードであるシーズンレスの動きからコットンを芯糸にしてナイロンやシルクを使用した毛足がある糸が多く見られます。
使用されているコットンはシャリ感がある清涼タイプではなく、柔らかさが特徴の温かみのあるコットンなので、春だけではなく秋冬にもシーズン長く使えるのが特徴です。
シーズン長く使える=シーズンレス
ウォームコットン
こちらもシーズンレスの動きと関係しています。
コットンを起毛させたりモール状にして柔らかい風合いを出すことで秋ー冬ー春と1年通して長く着用できるアイテムになります。
ノットヤーン、スラブヤーン、壁糸
これまでの春夏コレクションと比較すると今回の2025春夏コレクションでは糸形状に変化をつけたものが多くみられます。
これまではミックスカラーなど視覚的なアプローチが強い糸が多かったですが、今回はパッと見はシンプルな糸でも凹凸感があったりと糸形状:テクスチャーでニットらしさを表現し、トレンド感が強すぎない=タイムレスを意識した糸が多い印象です。
メタリックヤーン
光沢糸の分野においては秋冬コレクションからの流れを引き継ぎ春夏コレクションでもメタリック糸が注目です。
ビスコース×ストレッチ
シーズンレスのトピックでご紹介させていただきましたビスコース×ストレッチ糸。
ビスコース×ストレッチ糸はもとよりシーズン問わず着用できる人気の糸ですが、今回のシーズンレス、タイムレスの動きからその人気がさらに加速し、現在ヨーロッパ市場ではとても引き合いがある糸になるそうです。
(私が代理店をしているLINEAPIU ITALIA社(リネアピウ・イタリア)というメーカーは1987年に世界で初めてビスコースをニット用の糸として開発・展開したメーカーで同社のビスコース糸は世界中のアパレルブランドで愛用されていますが、2025年春夏シーズンではビスコース糸の売り上げがとても伸びているそうです。)
まとめ
PITTI FILATI 2025春夏コレクションでは、シーズンレスとタイムレスをキーワードに、永続的で環境に配慮した高品質な糸が注目されています。
環境問題への意識が高まる中で、ファッションにおいても持続可能性が重要視されており、次なるステップへ進むための重要な節目であることを強調しているシーズンであるといえます。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう!
けー