毛糸価格上昇の背景。

毛糸価格上昇の背景 その他

【この記事のポイント】

*毛糸価格が上昇している理由、背景を詳細に解説いたします。

*毛糸価格が上昇しているのは原毛価格高騰だけではなく、
電気代高騰や人件費高騰など様々なコスト上昇が背景にあります。

この記事を書いた人
けー@イタリア毛糸メーカー代理店マン

イタリア毛糸メーカー代理店歴約10年。
大学卒業後イタリアに渡り現地の毛糸メーカーに住み込みで毛糸を学び始めました。工業用毛糸専門です。高級ブランドが愛用する毛糸メーカーを担当し、最新の毛糸トレンドや工業用毛糸の情報を発信しています。

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はじめに

エネルギー価格の高騰など、インフレの影響で日本を含む世界中で物価が上昇しており、繊維・毛糸業界も同様で、毛糸製造にかかる様々なコストが増加し毛糸価格の上昇につながっています。

 

毛糸は原毛の価格が重要な要素の1つですが、原毛の価格だけではなく、製造工程や加工コスト、輸送費なども価格に影響を与えます。

 

今回は、様々な工程におけるコスト上昇の要因を簡単に挙げて、毛糸価格上昇の背景について紹介したいと思います!

 

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毛糸価格上昇の背景

毛糸価格高騰

 

毛糸価格上昇の背景を簡単に6つのセクションに分けてみました。

原毛、紡績、染色、加工、梱包、運搬

それぞれどのような影響があるのかご紹介させていただきます。

 

原毛

毛糸価格高騰の背景

 

まず毛糸を作るためにはウールでもコットンでも原毛を購入しなくてはなりません。

原毛価格というのは、毛糸価格を決めるうえでとても重要な項目なので紡績メーカーは常日頃原毛マーケットをチェックしています。

コロナ禍による経済の急激な停滞から回復というのはサプライチェーンを混乱させ、需給バランスの崩れ、温暖化の影響等でほぼ全ての原材料の価格がコロナ禍前よりも高騰しています。

 

以前ブログでもご紹介しましたがモヘア繊維の価格を例に挙げると、モヘア繊維は2011年から2022年の間で価格が290.9%上昇もしています。

モヘア繊維は需要の増加と温暖化による生育地での干ばつなどが大きな影響を受けていると言われています。

 

また昨年から頻繁に話題になっているリネン繊維価格の高騰。これはリネン素材の原料であるフラックスが温暖化・気候変動による不作が原因といわれています。

 

 

モヘア価格推移資料 引用:mohair_journal_2022

 

※詳しい詳細については下記記事を参照ください。↓

 

紡績

毛糸価格高騰の背景

 

糸を作るには用意した原毛は紡績機にかけて紡績しなくてはなりません。

ウールの場合、まず原毛を洗浄して不純物を取り除いて、繊維を均一に揃えたり、撚りを加えたりとと多くの工程を経て糸になります。

これらの工程は基本的に全てマニュアル化された機械を使用しますが、機械を稼働させるための電気代の高騰がコスト増加の要因となっています。

 

染色

毛糸価格高騰の背景

 

糸を染色するためには染色剤が必要になり、水も必要になります。

染色剤の価格高騰に加え、水道代価格も上昇しているため染色コストが上昇しています。

以前、日本の有名な染色工場の方にお話しを伺ったところ染色剤がものすごく高騰しているとのことでした。

同様の話はイタリアの染色工場でも聞かれ、世界的に染色コストがかなり高騰していると言われています。

加工

毛糸価格高騰の背景

 

紡績し、染色した毛糸は工業用であればコーンに巻きます。手芸用であればボール状に巻かれます。

紡績機械同様、機械を動かすための電気代が上がっていることに加え、紙やプラスチックでできているコーンの値段も上がっています。

そしてコロナ禍以降深刻になっているのが手芸用のボール状に巻くための工場が次々に廃業してしまっていることです。

1月イタリア出張に行った際に現地の毛糸メーカーの担当者がイタリアでどんどん工場がなくなっていると話を聞きましたが、残念ながらこれは日本でも同様です。

毛糸をボール状にするには専用の特殊な機械が必要となります。しかし専門工場が次々に廃業してしまっておりコストが上がり続ける中、今後も予測ができない状況です。

 

梱包

毛糸価格高騰の背景

 

生産された毛糸はビニールや段ボールなどの梱包材にいれて運搬されます。

わずかなコスト上昇だとしても積み重なっていくことでとても大きな負担となっていきます。

 

運搬

毛糸価格高騰の背景

 

モノを運ぶためには自動車などで運搬する必要がありますが、エネルギー価格高騰によりガソリン価格が高騰し運搬コストが上昇しており、人手不足も深刻な影響を及ぼしています。

日本ではオンラインショッピングの普及などにより、商品の輸送需要が増加したことで深刻なドライバー不足が問題視されてきましたが、これは日本のみならずヨーロッパ等でも同じです。

イタリアにおいては1万人近くのドライバーが不足していると言われ労働力不足、需要増加を背景に輸送コストが大幅に上昇しています。

 

まとめ

毛糸価格上昇の背景を簡単に紹介させていただきましたが、今回あげていない部分でも数多くコスト上昇が見られ、今後も需要や環境要因などにより毛糸の価格が上がっていくかもしれません。

イラストには描きませんでしたが円安による輸入コストが上がっている面がとても大きな影響を及ぼしています。。

 

 

それではまた次回の投稿で!

 

けー

 

参考資料:https://www.nextmobilityexhibition.com/en/news/carenza-autisti–le-proposte-di-anav.html#:~:text=During%202023%2C%20the%20European%20driver,a%20shortfall%20of%20275%2C000%20drivers.

 

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