【この記事のポイント】
*色ごとにゲージが異なる理由を解説します。
*染料の濃度、染色時間、染色温度が異なることで糸の状態が変化します。
*色違いでも全色ゲージを取ることが大事です。
はじめに
「色が違うだけでも全色ゲージをとったほうがいいのかな?」
編み物を始めたばかりの方だけではなく、経験豊富な編み手の方でもそのような疑問を持ったことがあるかもしれません。
私自身、ゲージを軽視したことで過去に何度も失敗した経験があります!泣
結論としてはゲージは全色とったほうがいいです!!
実は毛糸は色が違うだけで、編み上がりに差が出ることがあるんです!
この記事では、私が代理店をしているイタリアの毛糸メーカーから教えてもらった
「なぜ色によって違いが出るのか?」
「色違いの毛糸でも全色でゲージを取ったほうがいい理由」
を皆さんと共有したいと思います!
ゲージについて
そもそもゲージとは?
ゲージとは、編み地の密度を測るための指標です。
特定のサイズの編み地に対して、一定の目数と段数を数えることで、1ループあたりの縦と横のサイズを把握することができるのでサイズの誤差などを最小限に抑えられます。(ニットは伸縮性があるので多少の誤差というものは誰でも生じてしまいます)
工業糸の場合
工業糸は機械で編まれる事が前提なので機械との滑りを良くするために糸の表面には蝋が塗られており、紡績時の機械油なども付着しています。
これはつまり普通に編んだだけでは糸本来の風合いや良さはまだ出ていません。
糸本来の風合いを出すには一度洗濯する必要があり、洗濯することで初めて本来の風合いや良さが出ます。
色違いでゲージが異なる理由
色違いでゲージが異なる理由。
それは色ごとの染色プロセスの違いによって引き起こされます。
染料の濃度(量)
色によって使用する染料の濃度(量)が異なり、それが糸の硬さに影響を与えることがあります。
染色時間
糸を染める時間も、色ごとに異なる場合があります。
長時間染色される糸は、短時間で染色される糸よりも染料が深く浸透するため、質感が変わることがあります。
染色温度
染色を行う際は染料を糸に定着させるために色によってはかなりの高温で染める必要があります。
しかしそれは糸の収縮や膨張の程度が変わり、結果として糸の太さや質感に影響を与えます。
高温での染色による影響:繊維の構造変化
高温での染色は、繊維に物理的および化学的な変化を引き起こし、収縮や膨張を生じさせることがあります。
収縮
高温により、繊維内の分子が再配置され、より緊密な構造になります。これにより、繊維が収縮することがあります。例えば、ウールは高温で収縮しやすい性質があり、染色中の熱によって収縮が進むことがあります
膨張
高温によって繊維内の分子運動が活発になると、繊維が一時的に膨張することがあります。この膨張は、冷却後に収縮を引き起こす可能性があります。
豆知識:番手について
番手は紡績段階で糸を作る時の単位になります。
そのため染色後に色によって多少変化が起きたとしても、番手の表記自体は変わることはありません。
濃色と淡色の比較
濃色の毛糸
染料の濃度(量)
一般的に多くの染料が必要なので染料の濃度が高くなります。
染色時間
均一に染めるために染色時間が長くなることがあります。
染色温度
染料を定着させ均一に染めるために高温での染色が必要な場合があります。
そのため収縮や膨張のリスクが高くなり、結果として編み地の質感に影響を与えることがあります。
特徴まとめ
染料の濃度(量)が増えることで、糸に付着する色素の量が増え、高温で長時間染色されることが多いため糸に対する影響が大きくなり糸が硬くなったり、収縮や膨張が発生しやすい。
淡色の毛糸
染料の濃度(量)
比較的少量の染料で染められます。
染色時間
染色時間が短く済むことが多いです。
染色温度
比較的低温で行われることが多いです。
特徴まとめ
染料の濃度(量)が低いため、染料による糸への影響が少なく、濃色と比べても低温で短時間で染められる場合が多いので、糸に対する物理的な影響が少なく比較的柔軟性も保たれる傾向があります。
まとめ
色によって染色プロセスが異なり、結果として色によって糸への影響度合いは異なります。
ほんの少しの違いだとしても、編み進めていくうちに大きな違いとなっていくので色違いの毛糸を使用する場合でも全色ゲージを取ることがとても重要です!
ゲージを取るのは面倒だし、糸がもったいないという気持ちはとてもよくわかります!泣
しかし作品を少しでも正確に作るためにかかせない工程なので皆様も是非ゲージは全色とってください!!
それではまた次回の投稿でお会いしましょー
けー